時計
2013/05/09
近頃何かと話題の作家、村上春樹さんについて少し。彼の作品との出会いは大学時代、高校の英語科の恩師に「必ず読め」と言われて手にしたのが最初でした。それまでも本はかなり読んでいたほうだと思うのですが、彼の作品との出会いはやはり特別な何かだったのだと思います。その当時はあまり深くは考えずにただ、〈すごく引き込まれて〉読んでいました。学生時代というものは本を読むことそれ自体が正義ですから、何も考えずただ思うままに読んでいたような気がします。
大学を卒業し、民間企業に就職し、忙しい毎日が始まると、本に没頭できる時間も減り、好きだから読むのではなく必要だから読む、そんな時期が続きました。それでよい、そんなものなのでしょう。
昨年から赴任した高校の図書館に『1Q84』を見つけ、授業の空き時間に少しずつ読み進めていました。噂にたがわずとても面白く読むことができました。
「読んだよ」と、これも本好きの娘に声をかけて、「ふ~ん、どうだった?」と問われたとき、突然軽いショックに襲われました。18歳から20代前半まで、村上春樹の本は「青い鳥」そのものでした。必ずどこかで待っていてくれる、追い求めるべき世界。でも、今では彼の本の中に「青い鳥」を見つけることができません。
彼が変わったのでしょうか。いいえ、やはり・・・