チケット
2015/02/16
世間がバレンタインデーに浮かれ出すと決まって思い出すのが若かったあの頃。スピーカーから流れる美しいその年代への讃歌が、背中から首根っこを一掴みにしてこうつぶやく。「輝くはずだった時代にいったい何をしていたのか。」と・・・。
恋愛だけではない、友人関係や大学生活、アルバイト先での衝突、葛藤。何もかもが思い通りにならなかった。たしかに今思えばもっとうまく振舞うこともできたはずだ。あれほど多くのものを失うことにはならなかったはずだ。やり直せるなら・・・
だけどちょっと待てよ。あの時もし何も失わなかったら、あの時失敗しなかったら、その後の展開はなかったことになる。失い続けたからこそ、新しい出会いが生まれた。失敗し続けたからこそ新しい挑戦に出会えた。あの時、失わなければ、失敗しなければ、それはつまり定まってしまうことを意味する。変化するチャンスを失ったことを意味する。あのかき消してしまいたいほどみじめな時期にもその程度の価値ならあったということか。
差出人はメルウェル氏。同封されたチケットで25年前にタイムスリップできるという。チケットの右端に少し切り込みを入れるだけでいい。
少し迷ったが、やっぱりそのまま捨てることにした。