若葉たち
2018/04/21
昼間に非常勤講師として通っている高校はギンナンの産地にありまして、秋になればその地域は美しいイチョウの杜にしずみます。その美しさは私の貧しい表現力ではとてもとても手に負えるものではありません。そして春。冬の間に、一枚も残らず散ってしまったイチョウの葉が、新しい若葉となってその林を彩り始めます。毎年のことながら、その生まれたての新緑の何と頼りないことか。一枚一枚の葉もまだ小さく、その緑も心なしか自己主張を控えているようにさえ見えます。これから初夏にかけて若葉たちはその姿を大きく開き、その緑も徐々に力強さを増していきます。毎年のことだけれども、その安定した繰り返しへの信頼は他では得られない安心を与えてくれます。月日とともに変わりゆく自然が、毎年変わらない営みを繰り返してくれるこの当たり前に、改めて感謝したいのです。
さて、教室に入ると、今年もやや緊張した面持ちの若葉たちが並んでいます。まあしかし一週間もすれば初々しさは影をひそめ、さあどんなふうにこちらを楽しませてくれるのやら。そのうえこちらの若葉たちは、残念ながら毎年同じ姿で、同じ営みを繰り返してくれはしません。昨年と全然違う色や形の雑多な若葉たちが、思い思いのスピードと方向で成長していきます。イチョウの若葉が一斉に成長していく様をただ目を細めて眺めているのとはわけが違って、こちらはその一枚一枚をいかに早く把握し、指導法を修正し、新しい指導法に挑戦し、と、とてものんきではいられません。教壇に立って20年以上が経過し、様々な失敗も経験しています。そろそろベテランの入り口に来ているはずですが、毎年この季節は頭を抱えます。私がこぐ船の上にクラス全員を載せてしまえばあとは嵐が来ない限り安心できるのですが、そこまでが難しく、必ずうまくいくというものでもありません。まずは様子を見ながらゆっくり船出します。
一方、Shin塾では30名の若葉たちが、新しい学年へと歩を進めました。高校卒業までどうぞ末永いおつきあいをお願いいたします。そして卒業時には、世界中のだれとでも対等にコミュニケーションができる語学力・発信力・情報の吸収力。そして何よりも、学習という自己研鑽を一つの手段として育む成長力を身にまとい、次のステージへ踏み出してください。その力を手に巣立っていった卒塾生たちの背中を見送るとき、彼らには「可能性」という言葉が本当によく似合っていました。